去年の11月、ミニ四駆感謝祭の帰り道で、遂に迷いに迷っていた超音波カッター「ZO-41」を購入してしまった。
一年以上迷った上での購入だから、衝動買いでは無い…はず。
高いものなので、買った勢いでのレビューではなく、それなりに使った後のレビューとしてまとめてみる。
(書くタイミングが無かったわけでは決してない・・・と思う)
そもそも超音波カッターって?
超音波で切断力を上げた電動カッター。
一言で言えば「切れ味がとても良いカッター」。
どちらかと言えばデザインナイフに近い形状。
使い勝手も良くも悪くもカッター。
「引き切る」等のカッターを扱う上でのスキルはそのまま使える。
通常のカッターで切れるものは切ることが出来るし、切れない物(金属とか)は切ることが出来ない。
時間をかければカッターでも切れるものなら大抵切れる。
またの名をソニックカッター。
必殺技っぽくてカッコいい。
自分の使い方
人によって使い方が異なる為、参考までに自分の使い方を書いておくと、
用途:主にホビー用。玩具工作。
頻度:必要になった時に使う。
一回の使用時間は長くても10分程度。
要するに、そこまでがっつりとは使わない。
価格
今回購入した「ZO-41」の価格はヨドバシで4万円ちょっと…
久々の超高額品…(僕の金銭感覚では)
前モデル、前々モデルよりも1万円近く高いけど、後述するモード(出力)切り替えが必須レベルに便利な機能。
出力切り替えできて店頭で買える市販品はこの機種くらい。
ノーマルモードとハイパーモード
以前のモデルより高くても、この機種を選択したほうが良いと判断し、実際良かったと思っているのが、
ノーマルモードとハイモードの切り替え機能。
(前々モデルは実質ハイモードのみ、前モデルは実質ノーマルモードのみっぽい。)
ノーマルモードはプラスチックの溶けを押さえたモード。
ABSやPSを多用する工作では非常に重宝する。
エポキシも切れる。
ハイモードは、さらに出力が必要な時に使うモード。
出力は、おそらくカタログ上の最大出力である30W。
切れ味の差は割と大きく、ノーマルではほとんど切れなかったものもハイなら楽に切れたってことも多い。
業務で超音波カッターを使ってた知人から「30W以上はあった方が良い」という話を聞いたけど本当だった。
ただし、切れ味は良いけど、熱を持ちやすく、長時間(5~10分)使うと安全装置が働く。
溶けやすいプラスチックの加工も正直やりにくい。
色々な材料相手に使用した感想的には、溶けやすい物のためのローモードとそれ以外向けのノーマルモードって感覚に近い。
ただし、同封されている注意書きによると、あくまでもホビー用であるこの機種のハイモードは、「ここぞという時用」扱いで、ハイモード中心の使い方は推奨されていない。無理な力をかけた場合は保証外と厳し目なことも書かれている。
ハイモード中心に考えているなら素直に業務用買った方が良さげ。(10万以上するけど)
切れ味
切るものにもよるけど、噂通り「バターのように良く切れる」。
個人的にしっくりくる表現は「オルファのデザインナイフ以上の切れ味」。
オルファデザインナイフの切れ味時点でかなりの物。
切れ味に関しては、あれすら上回る。
ただ、最初にも書いたけどノコギリなどとは違い、カッターで無理な物は無理。
また、刃の届かないほど厚い物は切れない。
扱いやすさ
ボタンを押しっぱなしにしなくていので、割と自由な持ち方が出来る。
ケーブルの長さも十分。取り回しには困らない。(むしろ、長すぎて収納を考える方が大変)
切断テスト
PS、ABS
工作でおなじみのプラスチック。
ミニ四駆やビーダマンでも定番の素材。
フリスクケースだってABS。
ノーマルモードの真髄が味わえる位楽々切れる。
ハイモードだと溶けて逆にやりにくい。
ちなみに1mm厚ABS相手にノーマルモードで出来る細かい加工はこの程度が精一杯。
(「あ」の一部をくり抜いてみた)
FRP
一発で切断することは不可能だけど、普通のカッターで厚い物を切るときのように、同じところに何度も刃を入れることで切断可能。
ただし切断時に体に悪そうな煙がでる。換気には注意。
ただ、素直にハンドピース等もっと適した工具を使った方が絶対に楽。
因みにZO-41の場合、下手にハイモードを使うと切断面が焦げる。
ノーマルモードでやった方が綺麗に出来る。
カーボン
頑張れば不可能ではないけど、推奨はしない。
素直に別の適した工具を使った方が早いし安全。
ゴム板
厚み1cmのゴム板。
ハイモードなら切断可能。
これはバターのようには切れず、切断に数分かかったけど、通常のカッターに比べれば別段楽。
一気に切ろうとしないで、数回に分けて刃を入れるのがコツ。
エポキシパテ
おそらく超音波カッターと最高レベルに相性の良い素材の一つ。
ノーマルモードで切断可能。
硬化した後のバテでも、硬化途中のバテのように軽々切ることが出来る。
熱による溶けも無いので処理も楽。
紙
基本ノーマルモードでOK。
当然溶けずに切れる。
そもそも普通のデザインナイフでもスパッと切れるので、電源が入っていなくても切れる。
紙の束も軽々。
本の自炊時にも使えるっちゃ使える(まっすぐ切るのは難しいので、多少波になっても良い場合)。
ビニールコーティングされた紙とかも切れるので、パッケージを捨てる時の解体作業とかでも地味に重宝する。
木材
不可能ではないけど焦げる。
金属
切れない。
刃こぼれするし、やっちゃダメ。
こういう時に便利
いきなり切りこめる
個人的に真髄だと思っているのは、切り始めの場所を作らなくても切り込んで行けるところ。
今までだと
切りたい枠に合わせてピンバイスで穴を開ける→穴をニッパーで切り繋いで、カッターの入る隙間を作る、カッターバリを切る→仕上げ
という過程が必要だったのが
切りたいところに超音波カッターをあてて切り抜く→仕上げ
でOK。所要時間が圧倒的に短縮出来る。
余計な部分を切ることなく切断できるので、板から部品を切り出す時も無駄なく効率よく使う事も出来るかもしれない。
力がいらない
軽く切断できるので、変に力を入れる必要が無い。
なので、勢い余って指切った等の怪我をしにくいのもありがたい。
切断面が白くならない
圧で切る訳では無いので、白化せず切断面の色は綺麗。
ただし、結局溶けた部分の処理は必要。
なので、白化を気にしないならそこまでメリットには感じないかも。
こういう時は不便
電源が無い
電動工具なので、電源無いと動かない。
どうしようもない。
持ち運ぶ
意外と大きいので荷物が増えてしまう。
精密細工や仕上げに使いたい
溶かし切るので細かい作業には向かない。
バリ取りも無理。
仕上げの細かい加工は、通常のデザインナイフの方が楽。
無電源環境や、持ち運びが必要な場面も余裕。
必要に合わせた工具の使い分けはとっても大切。
お手入れ
大切なのがお手入れ。
ハンドピースの確認
切断時に細かい粒子がハンドピースに付くからか、振動で刃を固定するネジが緩むからか、こまめな手入れはほぼ必須。
起動直後に異音を感じたり、安全装置が働くようなら、カスが詰まってしまっている可能性が高い。
一度刃と刃固定具を外し、軽く吹き飛ばしてあげるだけでも改善される。
一番大切なのが刃固定ビスをしっかり締めること。
少しでも緩いとすぐ停止するし、何よりも本体に負荷がかかっていそうな嫌な音がする。
強めに締めるのが大切!
一応、六角レンチが付属している。
超音波の確認をするときの音叉も兼ねている。
とはいえ、残念ながら六角レンチとしては力が籠めにくく使いにくい。
もっと使いやすいレンチを用意したほうが良さげ。
自分はミニ四駆のスクリューキャップについてくる六角レンチを使用している。
また、初期の固定ビスの締め具合は恐ろしく固く、付属の六角レンチでは捻じれて刃が立たないほど。(固すぎる気がするけどあれが正常)
そういう意味でも別にレンチを用意したほうが良い。
刃を交換する
多少切れ味落ちても超音波で補ってそれなりの切れ味が出せてしまう。
なので切れ味が落ちたことに気がつきにくい。
とはいえ切れ味が落ちた刃で切断するのは、本体に余計な負荷をかけることになるため、良くない。
超音波カッターもカッターなのだから、切れ味落ちたらすぐに刃を交換するのが大事。
判断基準としては、「超音波無しで普通紙を切って問題なく使えるか」が試した範囲だと楽で確実な判断。
付属の刃もそれなりについているので、ここはケチる場所ではない。
切れ味復活直後の気持ち良さは超音波カッターでも健在。
この記事で一番言いたかったこと。
その他のコツとか
寸法に合わせて切りたい
プラスチック定規は切れてしまう、金属定規では超音波が伝わり嫌な音が響く。
なので、何かをあてがって直線を切る用途には向かない。
それでも比較的真っ直ぐな線を切るコツとしては、
先に普通のカッターで定規を当ててまっすぐな切り込みを入れた後、それをガイドに超音波カッターで深く切る
というのが有効だった。
カッターマット
切れ味が良すぎるため、プラスチックのカッターマット諸共、軽々切断してしまう(特にハイモード)。
カッターマットを傷つけない力加減で作業するのも面倒なので、カッターマットは使い捨てと割り切ったほうが良いかもしれない。
個人的なお勧めは厚手のダンボール。
上手く行けばただで入手可能で、傷ついたら捨てるだけ。
オススメの使い方
いくら便利な工具でも、しまうと出すのが面倒で結局使わない・・・って話もよく聞く。
なので、机の上に出しっぱなしにして、使いたいときにさっと使うという使い方を個人的には推したい。
幸い縦置きすれば省スペースになるし・・・・
まとめ
合う人には最高の工具。
とはいえ、便利な工具ではあるけれど、先に買うべき基本的なものがあるんじゃないかという気がしなくもない。
(ないものねだりかもしれないけれど電動ドリルとか・・・)
『工作趣味だけど時間が・・・時間を金で買いたい・・・』って人には間違いなくオススメできる。
やや高価なので、工作初心者のには手を出しにくいかもしれないけど、安定した切れ味なので安全に運用しやすい上、プラスチック切り抜きに関してはある程度手順を考慮しなくても問答無用で切ることが出来るので逆に初心者の方が恩恵を受けれるかもしれない。
以上、超音波カッターでした。
少なくとも自分自身は、買ってから今まで、買ったことを後悔したことは無い。
おまけ:超音波カッターの自作について
「超音波カッター 自作」というキーワードでたどり着く人もいそうだけど、素人が個人で作るのは不可能。
出来たとしても、材料代考えると素直に買った方が安上がり。
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