自作プラスチックヒーター~USB Type-C仕様~

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概要

プラスチックを曲げる時に使う道具「プラスチックヒーター」


アクリル1工作によく使われるので「アクリルヒーター」と呼ばれることも多い。

工作していて『プラスチックを曲げれば表現が広がるのにな・・・』という場面に出くわすたびに導入したいとは思っていたけれど、自分にとって理想的なヒーターが無くて長年保留したままになっていた

そんなプラスチックヒーターを、思い切って理想のヒーター目指して自作してみました。

とはいえ、プラスチックヒーターは多く工作系のサイトで扱われてる定番工作
二番煎じどころか二桁番煎じと言われても否定はできない。
実際、今回作るに当たって、いくつものサイトを参考にさせていただいた。
逆に考えれば「誰もが作る位便利なもの」といえる。
自サイトを持って工作物を上げるような猛者たちがやっていたくらいなのだから、その実用度はおそらく折り紙付き

それにプラスチックヒーターは何故か完成済みの市販品が存在しない2
貴重な市販品のヒーターも組立キット方式3

なので、結局プラスチックヒーターが欲しいなら自分で作るしか無い4

ヒーター概要

仕組み自体はシンプル。

・電気の力でニクロム線を温めて、金属管を熱する。
・熱くなった金属管にプラ板を当てて柔らかくして曲げる。

原理的にはこれだけ。
単純だけど、それ故にカスタマイズ製は極めて高く奥が深い

カスタマイズ例:ヒーターの温度

アクリルの曲げならば目安は表面温度160℃
作る際はこれを目標にニクロム線の長さを変えて温度調整していくことになる。

大きく温度を変えることはあまりないけれど、作業性重視で多少高温に設定したり固定温度ではなく温度調整機能を追加したりと製作者の趣味が滲み出る部分。

カスタマイズ例:ヒーターの長さ

一番大きいカスタマイズ要素は「ヒーターの長さ」。

無論長い方が大きなプラ板にも対応できるけれど、全体を暖めるためにより電力が必要取り回しや収納面も大きい分不便になる

逆に短いと対応できる材料の範囲が狭まるけど、省電力で済むし、取り回しや収納はかなり楽になる

カスタマイズ例:ヒーター材質

選択肢としては主に「アルミ」or「ステンレス」5

アルミは温まりやすい冷めやすい
大きい材料相手だと材料に熱を奪われがち
冷めるのを待つ時間が短くて済むと考えれば、使い終わって収納する時はメリット。
また、切断加工が楽。ただし、やや傷つきやすい

ステンレスは逆に暖めにくい冷めにくい
作業中プラ板に熱を奪われにくいので、作業の安定性は上。素材としての強度も高い
ただ、加工がやや大変

カスタマイズ例:電源

大きな区分としては「交流(AC)」or「直流(DC)」
具体的な候補としてはコンセント直結のAC100Vか、ACアダプターを利用してDC12V24Vあたり。

どちらにしろコンセントで運用するのなら最初からAC仕様の方がシンプルに仕上がる
とはいえ、AC100Vは注意して扱わないと危険
万が一の感電時を考えたらDCで少しでも低圧になっている方がまだ安全

カスタマイズ例:横受

性能というよりもデザイン要素
ヒーター部分土台に固定するために横受を使う

「パイプブラケット」とも。手すりやタオル掛けを作る時によく使われる。

今回の工作で初めて知ったけど、横受は系列によって取り扱いがかなり異なる
実際、材料を買った店では横受の種類が少なく、少し高価(一つ約250円)の物しか無かったけど、違うホームセンターでは一つ100円以下で売っていた

安く作りたい場合は複数店舗で吟味したほうが良い。

また、横受は種類も豊富。
同じ種類の横受でも貫通しているタイプ6片側が塞がっているタイプ72種類が存在
金属加工8のが面倒だった+調整の手間を考えて、今回は貫通しているタイプを採用

本来は、ここで手間を惜しまないと、より美しいものに仕上がる9

今回作ったもの

前起きが長くなったけどようやく本題。
今回作ったヒーターについて。

※自分の環境では問題なく使えていますが、試す場合自己責任でお願いします。
また一部に雑な処理があります

例:ニクロム線が一部剥き出し。

作った本人が使う場合はともかく、他人に貸す可能性があるなら、きちんと処理することをおすすめします

仕様(サイズと材質)

自分がやる工作は基本的に小振りなものメイン10
なので、収納考えてかなり小型に作成
具体的には全幅22cm100均のプラスチックケースに収まるサイズにした。
いい感じの収まり具合。関連道具も一緒に収納可能。
また、ヒーター部の材質は加工の楽さ優先で「アルミ」を選択11

仕様(電源:USB Type-C仕様)

今回一番こだわったことがUSB Type-Cによる給電
プラスチックヒーターが欲しいだけなら先駆者の方法をそのまま真似すればいいけど、それだと面白くないし、何となく負けた気がする12
そこで、電源供給方法に拘ってみる事にした
USBから電源取れれば汎用性があるけれど、USBの5V、500mA13ではアクリルヒーターを作るには電力が足りない
その対策として、わりかし最新の規格であるUSB Power Delivery(USB Type-CのUSB PD)を利用。
USB PDなら20Vまで取れるけど、供給側と消費側で出力電圧についての通信が必要なので素人工作では簡単には利用できない。
そこで「USB-PD_Adapter PDA-01」というUSB PDから電源を取ることに特化した専用の基板を調達して20Vを確保した。
USB-PD_Adapter PDA-01 - スイッチサイエンス
USB Type-C Power Derivery 対応のACアダプタやモバイルバッテリーのようなPDソース機器からPDOに従った任意の電源を取り出すためのモジュールです。
価格は2200円。少し高価。
ぶっちゃけ、今回の材料費の大半はこの基板
これでUSB PDに対応した市販の充電器14と繋げばプラスチックヒーターが使用できる。
何なら、USB PDに対応したバッテリーさえあれば屋外でも使えるのはロマン。

実用性


プラスチックの曲げたい位置の外側を熱して、柔らかくなったら曲げる。
それだけなのに、楽しくなるくらいプラスチックを曲げられる

最初はぎこちないけれど、慣ればほぼ90度(直角)だって作り出せる
切てから接着するよりも、楽できれいに加工できるのが本当に便利。

材料別詳細

目的としていたABS板集光アクリルを対象に曲げ心地をレポート。

基本的に上手に曲げれば強度はそんなに下がらないけど、平板と比べると角には形状的に応力が集中しやすくなってしまう。過度な負荷には注意。

白ABS(1mm厚)


工作の基本とも言える「白ABSの1mm厚」。
ヒーターに少し当てるだけで軟化するので、加工時間はかなり早い

もともと白化が目立たないので強引に曲げることも出来たけど、その場合は強度が犠牲になりがち。
ヒーターによる曲げならまったく白化しないし強度も十分。

黒ABS(1mm厚)

白ABSの色違い。曲げ心地はほとんど同じ。
黒いだけあって白化が特に目立つので、白化を気にせず曲げられるのは大きなメリット。

透明ABS(1mm厚)

白黒ABSより少し高価で強度が下がったけど、装飾目的では便利な透明ABS。
これも白化が目立ちやすいうえに、塗装によるごまかしも効かない素材。
透明感を維持したまま曲げられるのは感動モノ。
曲げ心地は他のABSと同じ。気持ち長めにヒーターに当てたほうがきれいに曲がるかも。
参考:ヒーター使わず無理やり曲げた時の白化。

集光アクリル(3mm厚)

加工が大変だけど、発光感が綺麗でワンポイントとして優秀な集光アクリル
3mmのアクリルだと白化以前に道具無しで曲げるのは不可能普通に折れる(割れる)

そんな加工が面倒な素材もヒーターを使えば曲げられる。

あれだけ固くて加工が面倒だった集光アクリルが軽い力で曲がる瞬間は不思議にすら感じる。

内部で光が伝わる集光アクリルの場合、切断・接着と違って、曲げた部分にも光がそのまま伝わる
だから、曲げ加工の恩恵が特に大きい

ただ、厚みがあるので加工は少し手間
小さめの部位なら簡単に曲げられるけど、大きな部位になると熱がやや足りないのか、なかなか均一に柔らかくならないので時間がかかる。
やや荒業になるけど、ヒーターに押し当てて、熱を加え続けながら曲げるという方法で十分加工はできた。

温度調整機能

ヒーターの設計段階では材料によって温度調整が必要になると考えていたけど、試作段階で運用してみたらヒーターに当てる時間の調整である程度なんとかなる事が判明
なので今回は温度調整機能をオミット

消費電力

気になるのは消費電力。
今回は消費電力を測定するために知人からUSB Type-C用のチェッカーを借りた。

繋ぐだけで電圧と電流が計測できるスグレモノ。
これで測ってみたところかかっている電圧は19.5V、消費電流は0.79A。
今回使っている「USB-PD_Adapter PDA-01」が出せるのが3Aまで。
わりと電流を食ってギリギリになるかと思いきや、割と余裕はあった15
ちなみに今回のニクロム線部分の抵抗値はこれくらい。
約24.7Ω。
オームの法則より19.5[V]/0.79[A]≒24.7[Ω]なので、計算値とも合致。

組み立て

やっぱり長くなってしまったので別記事に分割。
具体的な加工時の工夫点はこちらにて。

自作プラスチックヒーター ~組み立て編~
先日紹介したUSB Type-C仕様の「自作プラスチックヒーター」。 その組立について詳しく書いてみる。 概要や詳細は前回の記事を参照。 ※自分好みの仕様で作成しています。  参考にする場合、各自調整をしてください。...

金額

今回かかった金額は

ホームセンターで買ったものが
・アルミパイプ(Φ10・厚み1mm):460円
・シリコンチューブ:60円
・ニクロム線100W:200円
・ニクロム線200W:200円
・ガラスチューブ3mm:150円
・ガラスチューブ5mm:180円
・横受×2:570円
大体1800円+α程度

実際には「結局未使用たったけど念のため性能違いを買っておいた物」16や、「他の店だともっと安く買えた物」17があるので、もう少し安く作ることは可能

これに「USB-PD_Adapter PDA-01」が2200円

なので、ヒーター本体自体は約4000円計算。
コスパよりも趣味に走った分、やや高くなってしまった。

更に実際動作させるために必要な、USB-PDに対応した充電器とケーブル(約4000円)18を合わせると、トータル8000円くらいになってしまう

おかげで自分好みには仕上がったけれど、世の中にいる100均を極めて1000円以下で作った超人19にはコスパでは太刀打ちできない・・・

さいごに

工具づくりは「今回工作できて、次回以降の工作にも役に立つ」一石二鳥の工作
「今までの加工がが楽になる系の工具」もいいけれど、「出来なかったことが実現できるようになる工具」を入手して工作の幅が広がるのはまたひとしお

現状でも十分満足しているけど、
・動作中な事が確認できるようなパイロットランプ的なものを追加
・組み込み用の温度計を買って、温度計付きヒーターにする。
といった今後の拡張を検討するのも一興。

以上、USB Type-C仕様の自作プラスチックヒーターでした。

思ってた以上に便利だったので、プラスチック工作好きなら是非、自分好みの仕様のプラスチックヒーター作ってみてください。

注釈
  1. ホームセンターで買える工作向けプラスチックの中ではアクリルが最もメジャー。ABSは売ってない。[]
  2. 厳密には有るには有るけど、ホームセンターとかでは買えないような半業務用的なもので高価。[]
  3. 温度調整のオプションつけたら1万円くらい。[]
  4. 材料から自分で考えて集める必要があるか、ただ組み立てればいいかの違いはあるけれど。[]
  5. 別に鉄や真鍮でも作れることは作れる。個性派なヒーターを作りたいならあり。[]
  6. 手すりにする場合、途中に使う用。[]
  7. 手すりにする場合、両端に使う用。[]
  8. 具体的には片側が塞がっているタイプの横受けに丁度いい大きさの穴を開ける[]
  9. 特に「柱(?)部分が太く、中に線を通せる横受」を使って外に線が露出しない様に作った例が美しかった。[]
  10. 具体的にはフリックスアレイとビーダマンのパーツ。[]
  11. 変えたくなったら後から変えれば良い精神[]
  12. 工作好きの悪癖にして醍醐味。[]
  13. USB 2.0規格における上限[]
  14. 手持ちのものを使ったけど、新規で買うと少々高い。[]
  15. 追加改造が捗る。[]
  16. ニクロム線とガラスチューブ。[]
  17. 具体的に言うと「横受」。[]
  18. 普段からスマホの充電に使っているもの。新しく買ったわけではない。[]
  19. DC20V以下でヒーターを作るに当たって、特に参考にさせていただいたサイトの一つ。[]

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