【球射研】機構・テクノロジー紹介(詳細)

おもちゃ(ビーダマン)球体発射玩具研究会
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主に家庭用3Dプリンターで自作のビー玉発射玩具(通称:現代ビーダマン)について研究している人たちで集まったグループ「球体発射玩具研究会」。(略称:球射研)

超性能のビー玉発射玩具を作るにあたって、各々が研究を重ねた高性能機構について。
マニアックな部分を中心に紹介します。

もっと性能や効率が良い機構が発見されて、旧式になってしまったけど、何かの拍子にまだまだ化ける可能性がある機構もまとめて紹介。

トリガー

指の力をビー玉を押しだす力に変換する部分。
一番見た目的にわかりやすい要素。

イクストリガー

トリガー内部に押しバネを搭載した「イクスプロージョン機構」を搭載したトリガー。
「イクス機構」や単に「イクス」とも呼ばれる。

トリガーとホールドパーツの力で圧縮され、ビー玉発射と同時に解放し、その反動でビー玉を加速させる。
単純な機構ながらも弾速の向上やトリガー抵抗の軽減などその効力は多岐にわたる

メリット

基本的な構造のトリガーなら搭載すれば基礎スペックが上がる
向上する性能に対して比較的簡単に設計できることから、一部では一般汎用トリガーゾルトラークなんて呼ばれることも。

デメリット

機構自体のデメリットは、わずかにストロークが伸びる程度
実戦的にはほとんど影響はない。

あえて挙げるなら、イクス機構の性能が高すぎて非イクス搭載機との格差が広がってしまったり1ホールドパーツの重要度が下がってしまったり2といった、環境に及ぼす影響が大きいことが一番のデメリット。

マッチング

イクス機構のバネが圧縮されきるタイミングで、ちょうどホールドパーツが開放されるように微調整を行うこと「マッチング」と呼ばれている。
上手くマッチングが決まると、エネルギー効率の良い発射ができる。

機構の源流

大元は2000年代初頭には競技玩具研究所のせとのさん(@kyoganken)が開発していた「イクスプロージョントリガー」

【競技玩具研究所】ホールドパーツ発射玩具機構体系

知る人ぞ知る伝説のトリガー的な存在だったけど、2020年にeng-6さん(@6show_eng)が二重の極みトリガーを開発した際に再注目された。

機構の源流として名前を拝借させていただいている

パワーイクストリガー

正式名称:イクスプロ-ジョン機構内蔵型パワートリガー

概要

倍力機構イクスプロ-ジョン機構 を内蔵したトリガー。
イクスプロ―ジョン機構に重いバネを使用しても、倍力機構のおかげで楽に圧縮できるため、軽い撃ち心地と高い弾速を両立している

動画解説

メリット

・軽い撃ち心地と高い弾速を両立
・機体の振動の少なさによる高い命中精度
・片手撃ちが可能
・指の疲労を軽減できる

デメリット

・トリガーのストローク距離がやや長い

一言メモ

様々な競技の登場により、如何にして軽い力で発射を行うかに主眼が置かれることとなり、その際に開発されたのがパワーイクストリガーである。
このトリガーの圧倒的な汎用性能は他の追随を許さない

ペンデュラムトリガー

正式名称:ペンデュラム式ブローバックトリガー

概要

左右のトリガーを交互に押すことで超高速連射を可能としたトリガー。
その連射速度は通常トリガーの約2倍
イクスプロージョン機構とも相性がよく、弾速を犠牲にした連射ではない。

動画

メリット

圧倒的な連射速度
・弾速と連射の両立

デメリット

・発射時に機体が左右に揺れるため、機体コントロールが難しい
・トリガーの性質上、片手で連射することはできない3
・弾切れが早いため、残弾管理が難しい
・サーバー(マガジン)によっては玉の供給が追い付かない

一言メモ

従来、指発射式のトリガーでは連射と弾速の両立は難しいとされていたが、このトリガーの開発により現代ビーダマンの連射は次のステージへと進むこととなったのである。

マルチクロスグリップ

概要

機体のトリガーに対して左右に大きく伸びた形状が特徴のグリップ
片手、両手問わず握れ、人間工学を基に設計されており万人が扱いやすい。

メリット

・持ち手を左右に切り替えて発射することで手の疲労を分散できる
・片手撃ち、両手撃ち可能
・グリップを上から手のひらで押さえつける事で機体が安定する
・機体を持たなくていいため、機体の造形の自由度が上がる

デメリット

・グリップが大型化しているため、狭い場所での扱いが難しい

一言メモ

従来、片手撃ちは機体が安定せず、命中精度が低いという問題があった。
そこで開発されたのがこの『マルチクロスグリップ』である。
このグリップの優秀な形状は『パワーイクストリガー』『ペンデュラムトリガー』においても効果を発揮し、命中精度の向上に貢献している。

サーバー・マガジン

ビー玉を貯蔵しておく部分。連射するためには必須。

ヘリカルサーバー

概要

ビー玉が詰まらずに連射可能なサーバー(マガジン)。
・1段目
  自動的にレールに沿って整列されて中心に送り込まれる。
  1段目はまだ簡単。
・2段目以降に積み上がった玉はビー玉の自身の重さでビー玉が押さえられてしまい玉同士が引っかかってしまうため一筋縄ではいかない。そこで
  ・あふれた球を2週目に送る機構
  ・ダブルカラムマガジンを応用した中央引込機構
 といった工夫を施したことでスムーズに流れるようになった。

メリット

無振動でも極めて球詰まりがおこりにくい。 (無振動で50発程度詰まりなし)
  ※高性能機では反動が少ないので、並のペットボトルサーバーでは詰まってしまう。
可動部が無いのでメンテナンスフリー。
・雑にビー玉を入れても詰まらない。
・投入口も広くリロードが楽。

デメリット

一見簡単そうに見えて設計の難易度はかなり高い
 特に玉の量が増えると難易度が別次元になる。
・検討要素が多い。(直径 ピッチ(段の高さ) 内側への傾斜 引込口 引込曲線)
  → これらの要素が絡み合あった結果、ついた俗称が「沼」

・リロードしてから発射可能になるまで最速ではない。一瞬遅れる。

一言メモ

・ヘリカルサーバーについては以前詳しくい書いたので、もっと詳しく見たい場合はこちらも参照。

・単に「ヘリカルサーバー」と呼んでいるけれど、あえて正式名称を言うならば中央引き込み式仕切り無しヘリカルサーバー」
「外周出口式」や「仕切り有り」等もかつては研究されていた。

Q&A

バレル

命中精度を高めるために弾道を補正するパーツ。
かつては威力が下がる欠点が無視できず、装飾用と割り切られていたけど、実用性が見直されつつある

FFトライステーバレル

正式名称:フリーフォール式トライステーバレル

概要

固定した2本のレールにビー玉を乗せることで弾道を補正することをコンセプトとしたバレル
バレル上部に可動式の第3レールを内蔵しており、ビー玉の球径を問わず、高い命中精度を実現している

メリット

・高い命中精度
・ビー玉の球径の影響を受けにくい

デメリット

・補正距離を確保するために長尺のバレルが必要
・弾速がやや落ちる

一言メモ

・従来のバレルでは固定レールのみを採用していたため、高い命中精度を実現するためにレール間距離を詰めると、バレル内部に少し大きいビー玉が引っかかる問題があった。
そこで、固定レールと可動レールを組み合わせることで高い命中精度を保ちつつ、球径の影響を受けないバレルが完成したのである

ホールドパーツ

ビー玉を保持し、発射威力に関わるパーツ。
一番負荷がかかる部分なので、耐久性を考慮すると3Dプリンターだけでは鬼門となる部分。

ドレンキャップホールドパーツ

概要

ホームセンターで購入可能なエアコンのドレンホースに取り付ける「防虫ドレンキャップ」を転用したホールドパーツ。
発射のブレを抑えて、高い命中精度を実現。

補足:ラウンドクロウズ

爪をビー玉を包み込むように配置した、かつて公式で存在していたホールドパーツ。

力を均等に与えて発射時のブレを抑えるだけでなく、発射威力(速度)を均一にすることで高い命中精度が期待出来る。
形状の都合上3Dプリンターで強度のある造形をするのは困難。

メリット

極めて高い命中精度がだせる (要4本爪化)
・(3Dプリンターで作った部品よりも) 強度が高い
・比較的軽い撃ち心地と高い弾速を両立
・入手性が良好(ベースをホームセンターで購入可能)

デメリット

・威力の可変機構との両立は少々難易度が高い。

一言メモ

なべさんが発見し、某工作系youtuberも採用したことがあるので、ここで取り上げられてる機構の中では比較的知名度がある。

作り方

分割式ラウンドクロウズ(開発凍結中)

正式名称:ラウンドクロウズコア(分割式)

自作時の問題点

発射のブレを抑えるには、全てのホールドパーツがビー玉と均一に当たらなければならない。
3Dプリンターでホールドパーツを作成する時は素材や積層向きに気を付けないと簡単に破損してしまう。

自作ラウンドクロウズ(一次試作)

・ホールドパーツとホールドパーツを抑えるリングを分割して自作した。
・ホールドパーツの素材として、市販のラウンドクロウズと同じ素材であるPOMを採用し、CNCフライス盤を使用して切削加工を行った。
・ホールドパーツを抑えるリングは3Dプリンターで作成した。

 自作ラウンドクロウズ(一次試作)の性能

発射威力(速度)の均一化に成功。リングの厚さやホールドパーツの長さを調節することで威力調整も可能。
命中精度は市販品と比べて悪く、またリングに差し込んだホールドパーツが発射の反動で抜ける事がある。

今後の改良方針

・リングの作成精度向上
・ホールドパーツの形状変更
・開発機材の選定(3DプリンターやCNCフライス盤等)
・加工方法の選定(FDM方式、切削加工等)

  1. イクス機構と相性が悪いギミックが相対的に弱体化してしまった。(具体的には、バースト機構、ショートストローク機構等。)[]
  2. ホールドパーツ形状よりもイクス機構のほうが性能に影響するため、イクス機構を最大に活用する設計にする場合、ホールドパーツはイクスばねが圧縮される間、抑えるためだけの存在と化してしまう。[]
  3. 特殊な技術で片手連射も不可能ではないが、大幅に性能は落ちる。[]

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