当然本屋の開店前から並んで購入してきました。
スポーティングソルトがどんなマンガなのかはあっちこっちで語られている。
なので突っ込みどころについては僕が書かなくても誰かが語るはず。
それでも、個人的には冗談抜きでここ1年では一番楽しめた漫画。
だからあえて本気で褒め讃えてみる。
仮にも医学を取り扱う漫画なのに骨格がおかしいなど画伯的画力も話題ですが、僕自身が絵や人体構造について明るくないため特には触れません。
話の展開がわかりやすい
基本的な展開は「問題を抱えた人が来る→良くわからない理論で納得して救われる」というパターン。
不良バトルが始まったりすることはあるけど基本的にこれ。
スポーツ医療ネタが尽きたのか3話以降は主に不調の原因は家庭問題。
これは、某黄門さまなどのようにテンプレートを求めている人からすると安心感があるとも言える。
いきなり異世界編が始まったりはしない。(話自体が既に異世界な気がしなくもないけど)
キャラクターが一貫している
話にブレはあるけど、何気にキャラクター自体に大きなブレが無い。
・主人公塩谷は筋肉好きの変態
・しずかは自己中心的なお嬢様
・内柴は不真面目なインスタントヒーロー
・基本的に全員性格に問題あり。
このへんはよみきり版含め一貫している。
週刊誌読者でも単行本が楽しみ
普通は週刊誌連載版から単行本化する際に追加されるのはせいぜいおまけページが少しあるくらい。
なので週刊誌で読んだ人からすると「今回の話はここからここまでね」という感じで単行本を読んでも話自体に新鮮さは感じない。(キャラプロフィールとかで驚かされたりすることはある)
ところがスポーティングソルトの特に3巻は違う。
なんせ2巻終了時点でのストックが残り2話しかない。
読みきり乗せるにしてもページ数が全く足りない。
正直、3巻発売までは本当にどうするんだろうというワクワク感が尽きなかった。
結果をいうと大量の描き下ろしが掲載された。
書き下ろしなので週刊で読んでいた人も新鮮な気持ちで楽しめる。
こんな大幅加筆なのに最終巻の巻末コメントで「”少し”加筆します」と下手 (したて) に出るゆうと先生かっこいい。
あと、単行本の紙質の白さが良くわかる。
需要がわかっている
3巻の追加エピソードはネタバレ控え目で書くと「トラブルを抱えている人を凄い助っ人が助ける」というゆうと先生いつも通りの話。
ちなみにこのエピソードはボツになった次回作を再利用したんじゃないかていうくらい塩谷くんは本筋に絡まない。
それこそ「前作主人公がゲスト出演している」と言われても信じる程度。
当然のように倫理観のおかしいキャラや謎用語も登場。
普通なら今回登場したキャラを立選1位にして収めをよくしたくなるけれど、ゆうと先生は違う。
今回登場キャラは立選かどうかも不明。
(帯には「新たな立選(!?)登場!!(引用)」とあるけどちゃんと「?」でぼかしている)
なので「ランキング物なのに1位が不明のまま終わった」という塩らしさはきちんと残っている。
ただ、これを成長していないとか言って悪くとらえるのは適切ではないと思う。
なぜなら、スポーティングソルトの3巻を買うような人が何を求めているかと言えば決まっていて
スポーティングソルトのような塩分を求めている!
なので、中途半端に面白くされたら塩を求めている層からがっかりされてしまう。
そういう意味じゃゆうと先生は「読者が求めているものを書くエンターテイナー」と言っても過言じゃないと思う。
1話の設定が忘れられていない&子どもの目線
あくまでも1話は主人公能力紹介のプロローグ用なので本編とは別舞台。
小学生の学くんの足を早くする短編もの。
その中で学くんの友達のルナちゃんが転校しちゃうという展開が出てくる。
塩谷くんのアドバイスで学くんはルナちゃんが転校してしまう前に運動会の徒競走で1位を取り、良いところを見せたハッピーエンドで1話は終わる。
2話以降は部隊が立花港高校に移るため、小学生である学くんおよびルナちゃんは登場しなくなる。
正直、彼らは単なる使い捨てキャラだったのかと寂しく思っていた。
そんな彼らも忘れられていたわけではなく最終話で出てくる。
きちんと「ルナちゃんは転校した」という設定も引き継いだままで!
1話では遠く離れた学校に転校する雰囲気だったけど最終話と読みきりの描画を見る限りそれほど遠くない、小学生でも行き来出来る程度の距離の模様。
でも、これを単におかしい点と思っちゃいけない。
彼らは小学生。
小学生からしたら転校という物は遠くの外国に行くも等しい。たとえ隣の学区だとしても。
なのでリアルな小学生の行動としては割と間違っていないどころかむしろ正しい。
伏線を回収しようという努力はした
塩谷くんに古傷があるような演出があったけど、単行本化の際、それにまつわる演出がカットされた。
回収できない伏線を放置ではなくセリフ修正という手間をかけて初めから無かったことに。
キャラクターを大切にしている
作中の扱い・おまけ漫画を見る限り作者のキャラへの愛(思い入れ)はかなりあるように見える。
作者自身このキャラが好きなんだなという事がひしひしと伝わってくる。
キャラクターの説明不足感は「作者がキャラを知りすぎているあまり、普通の人はこのキャラの何を知らないのかが欠損しているせい」という説を押したい。
本当に好きすぎるらしく読み切り版でもほぼ容姿性格決め台詞が同一のキャラが出てくる。
そもそも塩谷の解剖学とインスタントヒーローは別の読み切り漫画。
塩谷の解剖学の連載版に当たるスポーティングソルトにインスタントヒーロー主人公を出すあたり本当に好きすぎだと思う。
良く言えばスターシステム。
多分次回作を作ったとしてもゲストという形で今作のキャラが登場する気がする。
単行本が少々レアもの
本屋に確認した限りでは最終巻の入荷数は少なめ。
なのである意味レアもの。
レアものというのは所持しているだけでなんか得した気分になれるもの。
人生の本質が詰まっている
最後になったけど一番僕が今回のまとめで書きたかったところ。
巻末やカバーの作者コメントを読むと
「ボーっとしているからもっとしっかりしたい(意訳)」
「色々な絵を描かないといけないから大変(意訳)」
といった「漫画書くならとして当たり前だろ!!」と突っ込みたい事がチラホラ。
はっきり書くと、成長をせずに今ある技術だけでなんとかしようとしている感がひしひしと伝わってくる。
きっと、ゆうと先生からの
「出来ることだけではなく新しいことに挑戦しないと何も成長できないぞ」
「自分的には努力したつもりでも周りの人は何も褒めてはくれないぞ」
「あなたは今何がしたいですか(これは原作引用)」
というありがたいアドバイスなんだと思う。
正直、これを書いている自分も耳が痛い。
おそらく明日以降、漫画を深く読んで解読する人たちによって、読み切り追加分の解読がなされて一部でまた盛り上がりを見せると思う。楽しみ。
「この文章を読んで買って読んでみたのに面白くなかったという」苦情は受け付けないのであしからず。
最後になりましたが、こんな凄い作品を世に出してくださったゆうと先生やジャンプの編集部の方々本当にありがとうございました!
他にも言いたいことがあるので他の視点でまた書くかも・・・
追記
読み直したら流石に小学生が高校生に交じってラグビーなんて危険なことはしていなかったので修正。すいませんでした。
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