あまりこのブログで取り上げていない1けれど、個人的にボトルマンも好きな玩具の一つ。

ビーダマン限りなく似ているけど、真剣に競技として追及すると「リロードにテクニックが必要で一発一発が重い射撃玩具」として全く別の競技として面白い。
どうしても弾が球体じゃないのでリロードが難しいから、連射性能自体はビーダマンに劣ってしまう部分はあるけれど、弾が軽いおかげで弾速が速いし割に比較的安全だし、騒音が少ないという点では間違いなくビーダマンよりも現代社会向きなので応援している。
ただ、自分の持論だけど、
ビー玉やペットボトルキャップを高威力で正確に飛ばすだけなら指で出来る。
威力や精度を維持しつつ指だけでは不可能な連射が出来ることこそ、ビーダマンやボトルマンという玩具の存在意義だと思っている2。
現在のボトルマンの連射も技3を駆使するスキルトイ的な楽しさがあるけど、正直に書くと「雑に鷲掴みした弾をマガジンに投げ入れての大連射」という、テクニックが無くても誰でも味わえる連射の爽快感が足りないと感じてしまう4。
実際「ボトルマンは連射がやりにくいからモチベーションが上がらない」というビーダーの声も少なからず耳にする。
ボトルマンでも「連射が出来ればいい」と理想を言うのは簡単だけど、
「そもそもボトルマンで投げ入れリロードによる連射はできるのか?」
そんな疑問に決着をつけるため、そして純粋に連射を楽しむためにボトルマン版ヘリカルサーバーを本気で開発してみました!!


念のため
本記事は「ボトルマンにはボトルマンの良さがある」「メーカーが超性能なマガジンを出さないのは、競技のインフレ速度やバランスを整えるうえで、明らかなバランスブレイカーを出すのは良くないから」という当たり前のことは理解したうえで、「今のボトルマンに足りないのはお手軽連射、それが出来る事がわかればボトルマンに興味を持ってくれる層が確実にいる」という信念のもと、「ボトルマンでも工夫をすれば大連射は可能である」という結論を残すことを目的として執筆しました。
また、本記事を参考にヘリカルサーバーに挑戦する場合、自己責任でお願いします。
今回の目標
ボトルマンの弾である「ペットボトルのキャップ」はギザギザがあり、そこが引っかかってしまう。

ついでに、投入向きが決まっていないサーバーだと内側にハマるようにキャップ同士が噛み合ってしまうと致命的。

ヘリカルサーバーをもってしても、悪意を持って詰まるように入れられると積み5。
そのため、全く詰まらないというのは無理。
それに、ヘリカル研究には際限がないので目標(ゴール)を決めておかないといつまでも終わらない。
そこで今回は、体感的な基準になってしまうけどライジングミルクのインフィニティマガジン6を5点としたときに80点位の性能を目指すことを目標に決めた。
詰まりにくい弾を開発するという方向性もあるけれど、市販のペットボトルキャップが使えるということがボトルマン最大の魅力だと思っているので、市販のキャップを向き問わず適当に投げ入れても連射できるマガジンというのが前提条件。
(市販のキャップは差が激しいので設計難易度上がるけど・・・)
実射映像
ボトルマン用ヘリカルサーバーの試作品を発射反動大きめのコーラマルエナジーDXにつけて試射。
— かたかけ ほうじ(ほうじ茶) (@toastedtea) December 19, 2022
やはり連射は気持ちが良い。 pic.twitter.com/i1sCTnvEVi
いきなり完成品の実射映像。
と言っても、これは最終版ではなく4世代前のヘリカルの映像だけれど、ヘリカルサーバーが上手く機能した時の映像はほぼ同じ。
いかに安定性を上げていくかがヘリカルサーバー開発の肝の部分。
この時点で結論を述べると、
ボトルマンでもヘリカルサーバーを使えば、投げ入れによる大連射が可能。
そもそもヘリカルサーバーって?
螺旋状に作られたスロープに弾を整列させておくことで、連射時に詰まりにくいマガジン。
ビーダマンにおいても、非電動のマガジンとしては別格の性能を持っている。
一見簡単に見えるけれど、傾きや直径が少し変わるだけで性能(詰まりにくさ)が大きく変わるため調整は非常に大変。
なので、通称「ヘリカル沼」と呼ばれ恐れられている。
何よりも、制作の難易度の割にぶっちゃけ地味。
突き詰めても安定性が上がるだけなので、成功シーンだけ動画にすれば何が違うのか全く分からないので、映えは殆どしない。
(「だけ」といいつつ実戦において安定性こそ無茶苦茶大事だけど。)
地味だからなのか、その沼っぷりが恐れられたのか、開発者が全く増えない・・・。
ちなみに、ビーダマンヘリカルの設計ノウハウも流用したけど、ボトルマン用ではビーダマンの時みたいな中央送り込み式は無謀。
なので、今回は素直に外周出口式で設計した。
ボトルマンヘリカル開発のコツ
ボトルマンヘリカル実現のために試行錯誤した工夫点について。
サーバー径
キャップの形状の関係で、サイズぎりぎりを攻めすぎるとキャップの向きによってはサーバーに入らなくなってしまう。

安定性も考慮すると、ボトルマンヘリカルはどうしても大型になってしまう。
振動によるほぐれを優先
先述の通り、全く詰まらないボトルマン用ヘリカルサーバーというのは不可能なので、いかに「振動を加えた時に解れるか」を優先して調整するのがカギ。
今回は大量貯蔵は捨てて、片手で一掴み8発程度と考えて、15発程度投げ入れた時の安定性を優先する方向で設計した。
下に抜けるスペースを作る
ハクジョウさんの発明。
ボトルマンヘリカルでどうしても弾の詰まりが発生してしまう。
それなら、仮に詰まっても多少は耐えられるようにキャップ1個が通れるスペースを確保すればいいという逆転発想で編み出されたアイディア。
数発ぐらいなら上側でジャムっても下側すり抜ける細工はしてある pic.twitter.com/UnbZZYqGRJ
— ハクジョウ (@HK_jyo) May 23, 2022
上が詰まっても数発は発射することができるので、その衝撃で詰まりを崩せるかもしれないのは非常に画期的。
中心に螺旋を作る
上案を元に発展させてみたのが中央部分の盛り上がりも螺旋にする構造。

こうすることで、「下に抜けるスペース」の高さを均一にすることができるので、整列されたキャップの上に重なりすぎて詰まることを防止できる。
ついでに、地味ながら貯蔵数も稼げるし、中心寄りに入っていたキャップも攪拌できるのがメリット。
摩擦を減らす
ペットボトルキャップの淵は3Dプリンターの積層の溝に引っかかってしまう。
その対策として、要点に低摩擦のテフロンテープ(フッ素樹脂テープ)を貼ると引っ掛かりが大幅に改善される。
少々高価な部材だけど、ボトルヘリカルにおいてはおそらく必須。



ビー玉ヘリカルの技術流用
ビーダマン用に開発したヘリカルのノウハウは当然流用可能。
キャップにおいては微々たる効果だけどヘリカルのピッチは2段目送り機構を意識して設定した。
ただ今回に関しては、直接の技術流用というよりも「○○をしても効果が無い(悪影響)」というノウハウをフル活用7。
精神面でも事前に「ヘリカル設計の大変さを覚悟したうえで作業に取り掛かれる」「フィラメントを大量消費するから事前に確保しておく」ということを知った状態で取り掛かれたから心が折れなかったのいうのはある。これもある意味技術流用。
また、ヘリカルサーバーのスロープ部分の凹凸は少しでも滑らかにした方が性能が上がることも判明しているのでヘリカル部は当然最高品質で印刷した方が良いし、可能ならばヤスリで滑らかにしたい。
応用編
ヘリカルサーバーの接続部を工夫すればドラゴジーナ用だって作れる。
ドラゴジーナの撃ち心地が良すぎたので、もっと撃ちたい欲に負けて「ツインヘリカルドラゴジーナ」という最高に頭の悪いものが完成してしまった…
— かたかけ ほうじ(ほうじ茶) (@toastedtea) December 30, 2022
命中精度は皆無だけど連射力が桁外れ。 pic.twitter.com/8caCgcFgZQ
ただし、もともとキャップの装填向きを揃えてのリロードが必須のドラゴジーナに、向きを揃えず入れるため、弾幕力は圧倒的だけど、集弾性が全く無いのでエイムは壊滅的。
弾の消費が激しすぎるうえに命中率が悪すぎて対戦用途では実用性薄いけど、それでも爽快感は別格。
ヘリカルサーバー開発史
可能性の証明
ビー玉ヘリカルの研究の最中から「ボトルマンにも応用できるのでは?」という話題は出ていたけれど、誰しもが「流石に詰まるのでは?」と思い込み、なかなか実際にボトルヘリカルに挑戦する人は現れなかった。
そんな中、2022年の5月下旬ごろにtwitterに「リング状にキャップが並ぶマガジンを作り、滑らかに連射している映像」を上げた方が現れる。
残念ながら、該当のつぶやきは称賛のコメントに加え、何故か非難のコメントも集まってしまったせいで投稿者が消してしまったため現在は残っていない。
とはいえ、「ヘリカル系のサーバーが可能である」という事が証明された歴史的ターニングポイント。
間違いなく偉業なので、誇りを持って消さずに残してほしかった・・・
ボトルヘリカル研究競争
ボトルマン版ヘリカルサーバーの可能性と聞いて動いたのが、やはりヘリカル研究家の自分とハクジョウさん。
— ハクジョウ (@HK_jyo) May 22, 2022
— ハクジョウ (@HK_jyo) May 23, 2022
ハクジョウさん開発早すぎる…
— かたかけ ほうじ(ほうじ茶) (@toastedtea) May 23, 2022
自分なんてまだサイズの設計段階… pic.twitter.com/aLjvIeSL6R
例によって試作して結果をtwitterに上げあう研究競争が始まる。
ヘリカルは沼という事実が知れ渡ってるせいか、今回は他の参入者は現れず。
といっても、ボトルヘリカルは方向性が見えない。
競争しつつも割と協力プレーで新技法は惜しげもなく交換し、パクリあう。
この過程で前述した、「通り抜けスペースの確保」や「内側二重螺旋」が編み出された。

大体5月の終わりには力つき始め、しばらく大きな進展もない日々が続く。
少し空いた2022年6月26日に行われた川崎玩具会でヘリカルのお披露目会。

ここではヘリカル部分だけでなく、きちんとマガジンとして仕上げたハクジョウさんに軍配が上がる。その後、泣きついてヘリカルとボトルマンを繋ぐジョイントを頂いた。


DXのボトルに簡単に取り付けられるし、結果的にGシリーズにも対応。
シンプルながら非常に完成度が高い。
ここでひと段落感が出てしまい、ボトルマンヘリカル研究はしばらく中断される。
ひとりで研究
2022年の12月にボトルマンDXのアニメが最新話8まで一挙公開されたので視聴。
その中の、サイドストーリーの「カオリのボトルマンクッキング!ドクペピオンDX制作秘話」で3Dプリンターによる機体設計をして「やっと現実の世界に来てくれたんだね~!」という開発者として心の底から賛同したくなるシーンをに加え、「ドクトルカオリの丸見え!ボトルマン~CCレオンDX編~」という「10連射という無茶ぶりをクリアするために工夫をして分割式のマガジンを使った」という展開が出てきて、ボトルマン関連開発に対するモチベーションは最高潮。
ヘリカルを放置していた自分に対する煽りに感じてきた9ので、「10連鎖で大変?甘いわ!」って感情も併せて一人でボトルヘリカルの研究再開。
ハクジョウさんから頂いていたジョイントを使いマガジンとして仕上げる。
帰ってきたヘリカル学会 (ボトルマン編) pic.twitter.com/XANd4peb2o
— かたかけ ほうじ(ほうじ茶) (@toastedtea) December 18, 2022
この段階に微修正を加えたものが、最初に上げた動画。
実際に使えるヘリカルサーバーが出来上がって連射を楽しんだので、より性能を突き詰めるため分割式を作成。


これで「外ヘリカルのピッチ」「内ヘリカルのピッチ」「内ヘリカルの高さ」「内ヘリカルの角度」といった、各要素を個別に検証できる様になったので、試行錯誤してパラメーターを詰めていく。
ただ、分割数が増えたせいで約235gと重量化してしまい、ヘリカル自体の性能は良いけれどマガジンとして使うとトップヘビーすぎて扱いにくいという悲しい結果に。
理想的なヘリカル形状について固まってきたので、軽量化のため一体化。
印刷時間も考えて、壁と中央ヘリカル部分に分割。
壁は並品質、ヘリカル部は最高品質で印刷。
分かれているので、やすり掛けがやりやすいのも地味なメリット。

これでほぼ完成形。
約160gなので運用に問題はない。
最後にヘリカル部を微調整しつつ、壁をビスで固定できるようにして

ボトルマン用ヘリカルサーバー完成!!
他に開発者がいないので、現時点では世界最高性能のボトルマン用サーバーといっても過言じゃない。
さいごに
以上、ボトルマンヘリカルの紹介でした。
ボトルマンでも投げ込んで連射できる事が証明できたので個人的には大満足。
設計自体は大変だけどそれに見合う爽快感は味わえるので、ボトルマンの連射に飢えている人は是非ヘリカルの設計に挑戦してみてください!
とはいえ、3Dプリンター制作ではどうしても細かい段差ができてしまうし、積層の事を考えるとデザイン性は皆無にせざるを得ない10。
これが個人製作の限界。
ボトルマンでも気楽に連射できる事の価値を多くの人に体験してほしいので、やはりここはメーカーの力による射出成型で、スロープが滑らかでカッコイいデザインで安定して誰でも入手することができる公式ヘリカルサーバーを出てほしい・・・11。
謝辞
最後になったけど、ヘリカル開発で協力してくれたハクジョウさんをはじめ、検証に付き合ってくださった皆さん、この場を借りてお礼申し上げます。
注釈- 時間不足。時間さえあればボトルマンも紹介したいとは思っている・・・[↩]
- 指弾という特殊技能を応用すれば指でも連射できるけど、大容量マガジン付きの機体に匹敵する連射は流石に無理。[↩]
- 手マガジン等[↩]
- 大容量マガジンがあるならあるで「素早く大量にリロードする」等、極めようとするとテクニックが必要だけど。[↩]
- (とはいえ、投げ入れたものが運悪く完全に噛合ってしまうことはないはず。[↩]
- 雷神モチーフの機体に付くマガジンとしては最高に好きなデザイン。[↩]
- 実例:可変ピッチは可変部分で詰まるので良くない。[↩]
- ドラゴジーナ登場の直前[↩]
- 無論そんな意図が無いのはわかってる。[↩]
- 単に自分にデザインセンスがないだけでもある。[↩]
- 高額セット商品付属とかになりそうだけど・・・[↩]
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