数ある競技玩具の中でも
「自分で改造した愛機を自分自身で操作して戦う」
「改造=自分で切り貼りして工夫の限りを凝らす」
という2つの要素が含まれている物1が特に大好きな自分がハマっている競技玩具
「フリックス・アレイ」。
改造可2な競技なので、他の人達が作った工夫を凝らされた個性的な機体を見るのは本当にワクワクする。
今回はフリックス・アレイの
「挑戦しがいのある優れたルールだからこそ
様々な機体が生まれている」
という側面から注目。
「そもそもフリックス・アレイって何?」って人に『そういう文化もあるのか!』と思ってもらえるよう、ルール面を中心に、ひとりの競技者の目線から本気で「フリックス・アレイ」3を薦めてみる。
フリックス・アレイって?
いきなり知らない競技のどこが凄いかを言われてもピンとくる人はいないので、別の記事として簡単にまとめてみた。

リンク先を読むのが面倒という人向けに要約すると、
フリックス・アレイはユージンさんが提唱した「次世代おはじき競技玩具」。
自分好みに作った機体を
指で弾いて落とし合う
ターン制の競技。
ただの落とし合いにをルールいくつか追加して、パワー以外にテクニックや駆け引きの重点性を増して、深い競技に仕上げたもの。
フローチャートに起こすとこんな感じ。
ルールの特徴~ここがすごいよフリックス~
大体の試合の流れをつかんだところで、ここからがこの記事の本題。
個人的にはフリックス・アレイのルールですごいと思うところ
・手による操作
・シュート前の向き変え/変形
・落とす以外の攻撃方法の存在(マイン)
・先攻後攻は実力で決まる(アクティブシュート)
・自滅の存在
・HP制
の7つを紹介。。
機体制作のレギュレーション
まずは機体のレギュレーション(機体規定)について。
基本が落とし合いである以上、大きくて重いものが強いのはわかりきっている。
なので、重量とサイズの上限はルールできっちりと決められている。
逆に言うと、重量とサイズさえ守れば、どう作るかは自由4。
現在5のレギュレーションを簡潔に言うと
・全幅:8.5cm
・高さ:5.0cm
・重量:72g
・レギュレーションをクリアしている形態があること6
・指定のベースを使用し、「ボディ」と「シャーシ」に分かれること。7
(※最新情報及び詳細は公式を参照)
この大きいようで小さい絶妙な制約の中で、どういう機体を作るかは非常に個性が出る。
「円形状」「とがった形」といった形状の工夫。
「金属素材」「ラバー素材」といった材料の工夫。
「バネを作ったギミックを仕込む」「フライホイール」といった、からくりを搭載。
更には重量をクリアできるならば「電子回路でモーターを制御」のような簡易なロボットにするのだってOK。
手で扱う
フリックス・アレイは人間が機体を直接指で弾いて操作する競技。
人間の指力がダイレクトに伝わるので、機体のスケールに対して大きな力で動くし、力加減の調整も自在。
シュート時に擦るように弾いて回転をかけたり、ひっかける様に弾いてジャンプさせたりと、シュートだけでもかなり応用が利く。
また、シューターを使わないからこそ人間側(指側)を強化するという選択肢が生まれる8。
人力なのでプレッシャーがかかっている状態だとミスもしがちということもあって、人が行うスポーツらしい楽しみ方ができるのも面白いところ。
たとえ全く同じ機体を使っても、人によって得意なシュートスタイルが違うので、機体も別の顔を見せる。
前述のとおり工作の自由度が高い競技なので「難しいものは作れない」という声も聞こえてきそうだけど、そこは人間が指で弾いて機体を操作する競技。
機体の多少の精度よりも、シュートする人間の力加減の方が遥かに影響が大きい。
工作精度の甘さはいくらでもカバー出来る。9
極論、多少慣れは必要だけど、だだ重りを貼って重量を調整するだけでも最低限は戦える。
シュート前の向き変え/変形
フリックスは攻撃でシュートする前に、機体の中心10を軸に機体を回転させても良い。
これにより、
「相手と触れる面には相手と触れるた時の機能11」
「シュートする面にはシュートしやすくする機能12」
と役割を明確にできる。
おかげでギミックを生かしやすい競技バランスになっている。
また、向き変えに加えて前述した機体の変形もこのタイミングで行える。
「攻撃形態に変形する」ようなロマンあふれる機体が輝ける場面。
ただし、シュート後には変形出来ないので、先を読む力が大事13。
自滅の存在
フリックス・アレイでは相手を落とそうが、マインヒット(後述)を決めようが、
自分が場外してしまったら「自滅」となり
相手への攻撃はすべて無効になり、
自分が1ダメージ受ける
という厳しいルールがある。
これにより、道連れ前提の特攻は出来ない。
相手だけ落として自分は落ちないような力加減やルート取りが重要になる。
落とす以外の攻撃方法の存在
個人的にフリックス・アレイがフリックス・アレイという競技たる最重要の要素は「落とす以外の攻撃方法の存在」だと思っている。
それが「マインヒット」。
フリックス・アレイ史上最大の発明といっても過言じゃない。
端的に言うとフィールドに軽量な「マイン14」を配置して、1回のシュートでマイン・自機・相手機の3つが接触すれば相手に1ダメージ与えられるという仕組み。
一応フローチャートに起こしたものがこちら。
(マインのもう少し詳しい説明については前の記事の補足も参照)
実演すると簡単な話だけど、「例えたいけど例えが浮かびにくい」ため、文字だけでみると初見で一番わかりずらい要素。
逆に言えば、それだけ画期的な発想。
ここさえ理解すれば『フリックスのルールほぼ把握できた』と思って差し支えないと思う。
相手を場外させる(2ダメージ)よりも与えるダメージは低いけど、接触でもダメージが発生するマインヒットによって
「軽量級によるヒットアンドアウェイ」
「テクニックによる長距離狙撃」
「変形して機体の一部を伸ばして相手と接触しやすくする」
といった、相手を飛ばすほどの火力が無い機体や指の力が弱い人でも戦える術が生まれていった。
「マイン」のおかげで機体や戦術の多様性に繋がっていると言ってもいいのかもしれない。
先攻後攻は実力で決まる
個人的に、フリックス・アレイ2番目の発明が「先攻後攻は実力で決まる事」だと思う。
フリックスはシュートの先攻後攻を決めるため、一番初めに「アクティブシュート」を行う。
攻撃型機体同士が正面衝突する姿はフリックスという競技において一番派手な絵が取れるシーン。
「仕切り直しのたびに順番を決めなおす」とだけ聞くと面倒そうだけど、試合の流れの中で順番決めを行う形なので、実際やってみると煩わしさは感じない。
HP制(体力制、ライフ制)
落とし合いでHP制にすること自体は普通の考え方ではあるけれど、
・落とせば2ダメージ
・マインヒットを決めれば1ダメージ
・自滅したら自分に1ダメージ
というバランスが本当に絶妙。
先に1ダメージ当てれば、後は落とせばKO圏内なので気持ち的に優位に立てるし、逆に最初に落とされて2ダメージ食らってもまだ逆転可能。
HP3に対して自滅で1ダメージというペナルティも軽くはないけれど重すぎもしない加減。
最初から最後まで気を抜けないバトルが楽しめる。
また、初期HP3なおかげで、最低でも1回はダメージを耐えられるから、即死が無い。
そのため、何もせずに完封負けする理不尽な展開は基本的に起こらない。
最悪なケースでも2回は機体をシュート出来る。
副次的なフリックスの良いところ
競技としての好きなところは書いたので、それ以外の細かい好きな点について。
省スペース
地味な魅力として、機体サイズが小さいので保管スペースをそれほど食わないのもフリックスの好きな点。
テーブル等、現地にあるものをフィールドに使うなら、機体さえ持っていけば対戦できるので、遠征時の荷物も少なくて済む。
騒音は小さめ
基本ターン制な上、72gのプラスチック同士がぶつかり合う程度なので、対人戦を行う物理玩具としてはかなり静かな部類。
瞬間的にぶつかる音がする程度。
ロマンギミックが生かしやすい
シュート前の向き変えとマインのおかげで変形機構やパイルバンカー系といった、SFとかでは映えるけど現実ではロマン枠と言われてしまうようなギミックが実用的に輝ける。
致命的型落ちはしにくい
機体の流行りは少なからずあるけれど、重量と寸法という一番性能に直結する部分が変わらない以上、型落ちは起こりにくい。
何よりも、鍛えたシュートテクニックは型落ちしない。
一度それなりの機体を作ってしまえば、何年も戦える。
使っていて物足りなくなってきたら、その時は新たな機体にレベルアップするチャンス。
総合力が問われる
フリックス・アレイは工作力も試合力も問われる総合的な競技。
一口に工作力といっても「材料知識」「加工スキル」「発想力」「芸術性」etc・・・と幅広い。
試合力だって「戦略眼」「腕力」「コントロール」「アドリブ力」etc・・・と多岐にわたる。
あまりにも取れる選択肢が多すぎて、すべてを極めるのは不可能。
逆に言えば、自分が得意なことを生かせばいい。
苦手なことはなるべくやらず、得意なことをひたすら伸ばすというのも大いにあり。
なんでもあり
勝ちを目指す機体を作るのも燃えるけれど、「レギュレーションに収める中で変わったネタをどう作るか」というのもフリックスの楽しみ方の一つ。
人型ロボットに変形したり、
好きなキャラとかを模したり、
オカルトネタに走ったり、
その場で貼り合わせて機体を作ったり、
光ったり鳴ったり、
カメラを搭載したり、
ネタ機体を挙げればきりがない。
むしろ、ネタ機でもそれなりに戦えることが凄いところ。
新素材を試す時など、『これを使って何かを作りたいけど、作るからには意味を持たせたい。』って状況でも、とりあえずフリックスのレギュレーションに当て込めば、どんな一発ネタもフリックスにできてしまう。
一応明記しておくと、ネタが他人と被るのは全く問題ないこと。
むしろ、同じネタ同士の対決ができて美味しい。
さいごに
といいうわけで、一人の競技ファンから見たルール面からのフリックスアレイの薦めでした。
この記事を読んで、一瞬でも『自分ならこうする』と考えた人には本当にお勧めしたい。
ただでさえ完成度の高いこの競技を、自分なりに考えた専用の機体で対戦する楽しさと底知れなさを是非体験してみてください。
また、「ルールに興味を持ったけど、機体の用意にハードルを感じる」という人は、手元にある消しゴムや定規とかを使ってでも良いので15、まずはこの競技のバランスの良さと奥深さ体験してほしい16。
やってみて、専用機の必要性を感じてから機体を作ったって遅くはない17。
消しゴム落とし/定規戦争に自作した物を持ち込みたかった人18なら、『こういう機能が欲しい』と思う場面が少なからずあるハズ。
注釈- 「90年代の工作系競技玩具」的な物[↩]
- というかほぼ「フルスクラッチ」[↩]
- 厳密には「フリックス・アレイ」で行う「アクティブバトル」という競技。(補足を参照)[↩]
- 当たり前だけど、「カッターの刃を付ける」「火薬で爆発する」といった相手を傷つける極端に危険な改造は禁止。[↩]
- 2021/1/9日現在。[↩]
- 厳密には、試合で一番最初のアクティブシュートだけはレギュレーションを満たした状態でシュートする必要がある。[↩]
- これに関しては本記事では割愛。公式参照。[↩]
- 具体例:筋トレ。[↩]
- 工作制度が高くて無駄になることはない。[↩]
- 厳密にはシャーシの中心[↩]
- 代表例:バネによる押し出しギミック。[↩]
- 例:クッションを貼ってシュート時の負荷を低減。[↩]
- 例として「防御形態」を生かす場合、自動変形等の工夫が必要。[↩]
- 正式名称:フリップマイン[↩]
- 機体重量だけは大差は無い方が良い。[↩]
- フリックス・アレイの主催者には申し訳ないけれど。[↩]
- 万が一消しゴムや定規が使いやすかったなら、それにをもとに機体を作るのもあり。[↩]
- および、自重せず実際に持ち込んだ人[↩]
コメント